「若い時に読んだ多くの書物の上に、今のあなたの地位は座っていると思え」中国の皇帝がそう言ったかは知りませんが、私はそう思う。最近、若者は書籍を読まないと言われているが、果たしてそうだろうか。私の周りには多くの学生がいるが、彼らはよく本を読んでいる。
そこで、今回はそんな学生たちがどのように本を読んでいるか調べてみようと思う。
文芸部員の本棚
最近、若者の活字離れという言葉をよく聞く。現在は色々な形の書籍があるとはいえ、確かにスマートフォンが普及してから、電車で本を読んでいる若者を見る機会が減ったような気がする。
しかし、学生たちに聞いてみると以外とそうでもないのだ。けっこう本好きがいる。そんなに多くないけどけっこういるのだ。ギザギザの十円くらいはいる。
そこで、本好きな学生にどれくらい本が好きか話を聞いてみようと思う。
彼女は東京農業大学地域環境科学部森林総合科学科4回生の藤田侑希さんだ。文芸部に所属しており、いつも本を読んでいる筋金入りの本好きだ。彼女を見ると本を読んでいるか、本の話をしている。本の話をしているときはキラキラしており、本当に本が好きなのだと感じる。
今回は学生ということで、家の本棚を見せてもらうことにした。家に入ると本だらけだ。専門書が多いわけでもなく、様々なジャンルの本がある。地震が来たら助からないだろうな、という恐怖を感じるくらい本が積まれている。本好きにはたまらない空間だ。
本好きな理由
藤田さんは、本好きなご両親の影響で本を好きになったそうだ。そのため本棚には、藤田さんだけでなく、ご家族のお気に入りの本が並んでいる。
子供の頃から多くの本に囲まれて育った藤田さんは、自然と本好きの道を歩んでいったらしい。ご両親から「おにたのぼうし」や「もちもちの木」、「かたあしダチョウのエルフ」など名作絵本を買ってもらい、小さい頃から読んでいたという。本の英才教育だ。
ただ、好きな本を紹介するときの藤田さんの顔を見ると本当に嬉しそうで、無理矢理押し付けられたわけではなさそうだ。きっと楽しそうに本を読んでいるご両親を見て、彼女も自然と本を好きになっていったのだと思う。
家族とのコミュニケーションツール
そんな藤田さんの本の読み方は、「乱読」だ。興味のある本は片っ端から読み、途中で他の本に移ることもある。その日の気分や、興味のあることで読む本を変え、同時並行で何冊も本を読むこともあるそうだ。テレビのチャンネルを変えるように、本を変える。そんな読み方だ。
たくさんあるお気に入りの本の一冊を見せてもらっているときに、気になるものを発見した。本に付箋や線が引いてあったり、コメントが書き込んであったりするのだ。
書いている筆跡も違うし、なんだろうと思っていたが、これは家族で本を回し読みしたときに、各自がお気に入りのシーンやコメントを書き込んでいるのだそうだ。ルールではなく、自然とやっているらしい。
書き込んであるコメントを見て、家族がこの本のどこが好きなのか、どんな気持ちで読んだのか知ることができるし、その後、食事の際などに感想を述べあったりできて楽しいそうだ。本に線を引いていいのはテストのときだけだと思っていたので、私には衝撃だった。
本は読むだけのものだと思っていたが、それだけではない、本の自由さを教えてもらえたような気がした。私も今度試してみたい。見せる相手がいないけれど。
そんな藤田さんのお気に入りの本を少しだがご紹介したいと思う。
藤田さんのお気に入りの本
そんな藤田さんお気に入りを聞く。お気に入りの本を棚一個にまとめてくれたそうのだそうだけど、そんな中から、特にお気に入りのものを教えてもらった。
江戸の暮らしや文化をわかりやすく伝えてくれる、杉浦日向子さんの「一日江戸人」(新潮文庫)だ。人々のちょっとした暮らしの出来事が書いてあるこの本を読むと江戸時代の人の生活がありありと想像できる。
次はこちら、佐藤愛子さんの「娘と私の部屋」(集英社文庫)。佐藤さんが娘さんとのヒビを綴った愉快なエッセイ集だ。これを読むと、その痛快なやり取りに元気をもらえるそうだ。
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少し怖い本も多く読んでいる藤田さんが、勧めてくれたのがこちら。夢野久作さんの短歌集「猟奇歌」から赤沢ムックさんが再編集した本「猟奇歌」(創英社)だ。ぞくぞくする怖い短歌集が収められている。
海外の作品も紹介してもらった。ファンタジーの名手、クリフ・マクニッシュさんの「ゴーストハウス」(理論社)。
ダークファンタジーの女王と言われたタニス・リーさんの本も揃っている。表紙も可愛くて、コレクションしたくなる。
様々な人々にいたずらを仕掛けた様子を描く、A.スミスさんの「いたずらの天才」(文藝春秋新社)なんだか、ほっとする。
藤田さんが大好きな本には「三国志」(講談社)や「銀河英雄伝説」(徳間書店)もある。歴史的なものや、それに近い文体のものが大好きだそうだ。彼女の目には本を読むとその歴史や自分の目の前に広がっているのかもしれない。
講談社
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それにしても好きな本の幅が広い、広すぎる。黄河の幅よりも広いかもしれない。色々な本が今の彼女を作っているのだと思う。
元気のカンフル剤で、成長の肥料
藤田さんは、元気を出したいときに本を読むそうだ。本は彼女にとってカンフル剤であり肥料でもある。元気にすくすく育つためのツールなのだ。彼女の素敵なご家族や、素直な性格の秘訣がなんとなくわかった気がする。
最近の若者は確かに活字離れが進んでいるかもしれないが、藤田さんのように本好きの若者のもけっこういる。ギザギザの十円くらいはいるのだ。若者だからって本を読んでいないとは限らないのだ。
みなさんも今日は本を読んで、友人や家族、大事な人たちと語り合ってみてはいかがでしょうか。