「その人を本当に理解したいなら、本棚を見ろ」、そんなことを日本の偉い経営者が言った、かどうかは知りませんが、私はそう思う。その人の本棚を見ると、その人の人生までわかるようだ。
そこで、研究者達の本棚を訪ね、おすすめの本を紹介してもらうことでその知識を我が物にしようと思う。
一般財団法人進化生物学研究所
今回は東京農業大学と関係の深い、一般財団法人進化生物学研究所の蝦名 元先生の本棚を訪ねた。進化生物学研究所は東京農業大学育種学研究所を前身として、1974年に設立された研究所だ。

食と農の博物館の上にあります
フィールドワークを中心に動物や魚類、植物の基礎的研究を行い、生物の進化などについて研究している研究所だ。現在は、昆虫、魚類、植物、化石など様々な研究室で研究が行われている。

様々な研究室があります
蝦名先生は魚類学研究室の研究員で、標本の作り方や、新しい標本作製法などの研究をしている。

一般財団法人進化生物学研究所 蝦名 元研究員
人に伝える面白さ
蝦名先生がこの研究所にやってきたのは2004年頃。東京農業大学のオホーツクキャンパスにある生物生産技術学科を卒業後、子供の頃から大好きな自然や生き物のことを、もっと多くの人に知ってもらおうと、博物館などで働くための資格を取得できる世田谷キャンパスへ来たことがきっかけだ。

多くの人に生き物の魅力や面白さを伝えたいのです!
その後、正式に研究所の研究員となり、現在は子ども達への生き物観察の講座や、透明標本作成の講座などを行っている。とにかく、生き物たちのワクワクや感動を多くの人に伝えたい先生だ。

研究所がだした本もあります
東京農業大学出版会
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先生の好きな本
そんな先生の好きな本は、図鑑や絵本などの、ビジュアルで見ても楽しい本が多い。まずは見てワクワクするものが好きなのだそうだ。人は見た目が九割というが、本もそうなのかもしれない。

農文協の「そだててあそぼう」、絵本シリーズ

子ども向け絵本とは思えないほど詳細な補足
これらの絵本は、子ども向けに絵などを多用してわかりやすく書かれているが、実は大人が読んでも学べる内容になっている。私もイベントの際、このシリーズを読んでいる子どもに出会い、最初は先生と呼ばれていたが、最後は逆に彼のことを先生と呼んでいた。もちろん、その後すぐにこの絵本を買った。

本を読んで、古い自分を脱ぎ捨てました!
先生の本の選び方
先生の机には、そんなに本が多いなとは感じなかった。先生の研究に関わる本や、お気に入りの本が綺麗に分類され、コンパクトに置かれている。大きな専門書などはそんなにないのだ。

綺麗に整頓された本棚
その理由を尋ねると、専門書は値段が高いし、場所をとる、また、研究が進むと内容が数年で更新されてしまう可能性もあるので、できるだけ最新のものを図書館や、他の研究室の書棚に読みに行くそうだ。

このような専門書や

このような本は図書館などに借りに行く
図書館や他の研究室に行けば、より多くの本を見ることができるし、専門書も揃っているので効率がいい。また、思いもかけず、自分の知らなかったいい本に出会うこともあるらしい。

図書館のリサイクル図書にもお宝があったりする
どうしても自分で所有していたい本や、入れ替わりが早くすぐに図書館からなくなりそうな本だけ買うのが先生のスタイル。いろいろなことを学びたい先生ならではのスタイルかもしれない。私も一人で欲張らずみんなと分け合う広い心を持ちたい。

最近は図書館でDVDも借りることができます
経験のショートカット
先生に「本をよく読みますか?」と尋ねたところ「読みます」と即答された。先生にとって、本を読むことは経験のショートカットなのだと言う。人は限られた人生の中で様々な経験をする、しかし一人が経験できることには、どうしても限界がある。そこで本なのだ。本を読めば自分が経験しない事でも、知識として蓄積できる。

本は経験のショートカット
誰かが調べたり、考えたり、体験したことを自分の物に出来る。それが本の素晴らしさなのだと先生は言っていた。まさに本棚には誰かの人生が詰まっているのだ。

多くの人の知識が詰まった一冊
先生おすすめの本
そんな先生のおすすめの本を紹介したいと思う。ビジュアルも内容も兼ね備えた、そんな一冊が多い。

向井康夫著 絵解きで調べる田んぼの生き物(文一総合出版)
文一総合出版
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イラストでわかりやすく特徴が書いてある

近藤繁生、酒井雅博、大野正彦著 わが家の虫図鑑(トンボ出版)
トンボ出版
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インデックスが名前もわからない虫を調べるのにやさしい

自然史学会連合監修 理科好きな子に育つ ふしぎのお話365 誠文堂新光社
理科好きな子に育つ ふしぎのお話365: 見てみよう、やってみよう、さわってみよう 体験型読み聞かせブック
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理科に興味を持ってもらえるようなおもしろい内容が365日分!
先生はイベントをやる前等に、このような、子どもから大人まで様々な人が楽しめる本を眺めては、どんな風に伝えればみんなが楽しめるのかを考えるそうだ。また、世田谷区で行われる冬の名物史「ボロ市」で昔の教科書を買うのも楽しいらしい。時間や空間を超えられるのも本を読む魅力の一つだ。

古い小学校や中学校の教科書

意外と難しい。カラーページもある!

細かい細工も
本を読んだら、実際に確認しよう!
前回取材した麻生先生も言っていたが、本を読んだら、実際に実験してみたり、見に行ってみたりすることが大切だそうだ。そうすればより本の知識も深まるし、新たな発想も生まれる。先生も本を書いているのだが、これもすべてまねしたくなる内容だ。

先生も本をだしています
ケンタッキーフライドチキンから骨格標本を作ったり、街中に冬虫夏草を探しに行ったりしている。天気が悪い日は本を読んで、天気がいい日はそれを試しに地域に出かけるのもいいかもしれない。

実験したくなるような内容がたくさん。今年の夏の自由研究にどうぞ

蝦名先生ありがとうございました!
講談社
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取材協力:一般財団法人進化生物学研究所