故郷というのもはいいものだ。幼き頃を過ごした場所に大人になって出かけると、懐かしさに出会う。ここを歩いた、このお店によく出かけた、など、懐かしさのビッグウェーブである。
そこで、私が中学時代を過ごした、北九州市・小倉に出かけてみることにした。2015年、30歳になった私は15歳の頃の私に出会うことになる。エロ本にまみれた15歳の私だ。
実家の懐かしさ
大学への進学や、就職で故郷を離れる。親を地元に残し、新しい土地で、新しい生活を送る。盆暮れ正月になると、地元に帰り、親と過ごし、友達と会ったりする。通っていた学校を見ては、昔はもっと大きく見えたけどな、と思うのだ。
私の場合は実家が「転勤族」のため、特に地元がない。大学に行くタイミングで、上京して、その後も実家は佐賀、香川、東京などに移動して、実家に帰ったところで、親はいるが、その街は知らない街。全然地元や実家という感じがしないのだ。
実家がコロコロ変わるので、自分が以前住んでいた場所に行くチャンスがなかった。「懐かしいな」と思う機会がなかったのだ。そこで、私が中学時代に住んでいた福岡県北九州市に出かけることにした。中学の頃の自分に出会うためだ。
真面目でバカな中学生
2015年、私は30歳になった。北九州市で中学生だったのが、半分の15歳の時だ。徳力という場所に住み、守恒中学校という中学に通っていた。とても真面目な学生だった。中学校まで、40分という通学を二年半続けた。
中学校は3年間通うはずが、守恒中学校には二年半だ。三年生の二学期から大分県に引っ越したためだ。大分での中学校は期間が短く、全く頭に残っていない。私の中学時代は中途半端だけれど、守恒中学校ということになる。
久しぶりに見た中学校は懐かしかった。何も変わっていない気がする。私は部活には入らず、ホームルームが終わるとすぐに帰り、夕方のドラマの再放送を見ていた。基本的には遅刻もせず、ずる休みをすることもなく、真面目な学生ではあったと思う。
当時はまだ土曜日に学校があり、小倉競馬場が窓から見え、休み時間になれば、窓に張り付き、競馬を見ていた。真面目な学生だったけれど、競馬が好きで、勉強は絶望的にできず、英語は14点などという何点満点のテストなのかと、自分でも疑問に思える点数ばかりだった。ちなみに100点満点で14点。絶望的だ。
競馬が大好きで、授業を真面目に聞いているようで、ずっと週末の競馬のことを考える中学生。周りのクラスメイトは部活に励み、惚れた腫れたの話をし始める時期だ。男女二人で帰るクラスメイトを見ることもあったが、そんなことはどうでもよかった。
競馬のためのお金を作る
惚れた腫れたに今でこそ興味があるが、私のそういう目覚めは遅いものだった。女性の裸にも興味がなかった。競馬なのだ。女性の裸より、競走馬の体つきが興味ぶかく、エロ本よりも、「優駿」や「ギャロップ」といった競馬雑誌が欲しかったのだ。
競馬雑誌は当時600円ほどで、私のおこずかいは「1000円」だったので、600円は高い壁だった。そこで私はお金を作ることにした。中学生なのでバイトはできない。そこで周りの性の目覚めを利用してお金を作ることにしたのだ。
住んでいた家の近くに、お墓があった。その入り口がちょっとした森みたいになっていて、よくそこに「エロ本」が落ちていたのだ。かなりハードなものが多く、男女の交わりが続くエロ本だ。内容に興味はなかったけれど、金になると思うと、目が輝いたのを覚えている。
今でこそインターネットでそういうのは見られるけれど、当時はまだ今ほどネットは普及しておらず、紙媒体のエロは燦然と輝き、中学生という性の目覚めの年齢に差し掛かる若者にはなくてはならないものだった。
いま思えば、なんでそこによく落ちているのかわからないけれど、安定供給ができるレベルで落ちていた。家に持ち帰えり親にバレると嫌なので、これまた近所に隠し、私はそこを「倉庫」と呼んでいた。
私はエロ本が落ちていないか、中学から帰ると週に4回は見に行き、あると拾い倉庫に移動させ、学校で「エロ本買わない?」とクラスメイトに声をかけ、売り、お金を作り、競馬雑誌を買った。私の中学時代の青春はエロ本だった。
エロ本はかなり売れた。例のエロ本が落ちている場所でそういうビデオまで拾ったので、レンタルビデオ業まで始めた。エロに金を払うクラスメイトの意味がわからず、相変わらず私は競馬で、エロが売れるたびに、私の競馬への造詣はより深くなっていった。
性の目覚めのブックオフ
競馬ばかりの中学時代で、クラスメイトの名前は覚えていないけれど、当時小倉競馬で走っていた馬の名前は今も覚えている。カクテルリコ、マイターン、アグネスワールドが小倉に来た時はスターが小倉に来たような興奮をしたのを覚えている。
そんな私に性の目覚めが訪れる。競馬雑誌だけでなく、競馬漫画も読んでいて、中でも好きだったのが「じゃじゃ馬グルーミン UP!」だった。少年サンデーで連載されていた漫画なのだけれど、忘れもしない「19巻」である。これが性の目覚めだ。
競馬漫画で少年漫画のじゃじゃ馬グルーミン UP! なのだけれど、19巻で主人公とヒロインがやってしまうのだ。しかも妊娠する。雷に打たれたようだった。競馬と恋愛って両立するんだ、と気がついたのだ。恋愛のよさにも気づいたのだ。
エロ本を買っていたクラスメイトの気持ちも理解した。そりゃ、買うわ! と。19巻を読んでからは、男女二人で帰るクラスメイトが羨ましく感じられた。この羨ましいは今でも続く。今の私を作ったのはまさにこのブックオフからだった。
ちなみに私がじゃじゃ馬グルーミン UP!の19巻みたいに、じゃじゃ馬を経験するのは、20歳を超えてから。随分と先の話だ。当時の私に言いたい。そのエロ本を使い、もっと早めに目覚めとけと。そしたら、私もクラスメイトと付き合えたかもしれない。あと、勉強しろと。
地元に帰ろう
本当に久しぶりに訪れた地元だったけれど、「懐かしい」はもちろん、街の変化に驚き、当時を思い出し、自分を奮い立たせることができる。今回の場合は、何を奮い立たせればいいのか悩むけれど、2016年も今後も頑張ろうと思う。
思い出を地図にしました! 役立ててください。中には股間が異常に痒くなった場所とかもあります!