黒魔術というものがある。悪魔の力を借りる魔法だ。それはたとえば、呪いだったり、悪魔の召喚だったりする。そのためにはいろいろな道具が必要だ。それは謎の人形だったり、生き物だったりなど、様々。
そんな呪術に使う道具を売っている市場があると聞いた。誰の心にもあるという中二心をくすぐるではないか。ということで、その市場に行ってみようと思う。
呪術用品の市場
呪いたい、誰かを呪いたい、と思うことが誰にでもある。もちろん例外の人もいる。私などはいつも「みんな様ありがとう」の気持ちで生きているけれど、私以外は呪いたい、誰かを呪いたいと思っているはずだ。
ただそのような呪術に興味はある。呪いたいとかはないけれど、興味はあるのだ。日本でも藁人形を使った「丑の刻参り」など、黒魔術的なものが盛んだ。もちろんそれは世界中にある。世界中がアイラブユーであり、世界中がノロイタイーなのだ。
近年は黒魔術の人気が低迷しつつある。科学の時代なのだ。でもね、安心してほしい、世界にはまだ黒魔術が生きている。数少ないけれど、そのような呪術用品の市場もある。それがメキシコの首都にある「ソノラ市場」なのだ。
市場を偵察
地球の歩き方にも「ソノラ市場」は小さく載っている。治安は決してよくないと書いてあるし、現地の知り合いに聞いても、治安は決してよくないと言っていた。しかし、私はありがとうの化身として、黒魔術を見に行かねばならないのだ。
全く持って何に使うかはわからない。困るのは日用品も売っているので、必ずしも呪術に使う物ではないということ。呪術用品だ、と思って買ったら、自宅での便利なアイディア商品だったりする可能性もあるのだ。
その逆で料理に便利なアイディア商品と思って使っていたものが、実は呪術用品ということもある。便利と思って料理に使っていたら、その動きが実は悪魔を召喚する魔法陣を描いている、なんて可能性もある。そのような怖さがあるのが、ここソノラ市場だ。
治安は悪いと聞いていたけれど、そこまで緊張感はなかった。ただ私の治安への緊張感は他の人よりユルいらしく、以前そのような話をしたら、「ハイエナにでも育てられたのか」と言われた。なので、治安は悪いのかもしれない。
呪術用品を買う
せっかくここまで来たのだから、ありがとうの化身である私だけれど、何かを買おうと思う。大きいと持って帰れないし、あまりに怪しいと税関を通れなさそうなので、王道ともう言える黒魔術的なものを買うことにした。
ブードゥー人形がなんなのかはよくわからない。お店の人に聞いたら説明してくれたのだけれど、メキシコなのでスペイン語でして、ほぼわかりませんでした。ただ呪いがどうの的なことを言っていた気がする。
ブードゥー人形だけではなく、別のお店で石鹸を買った。これで体を洗えばいいらしい。黄色い箱のものは仕事がやってきて、赤い箱のものはモテるらしい。これを使って体を洗えばいいだけなので、素晴らしいではないか。仕事が増えてさらにモテるのだ。
ブードゥー人形を使う
ブードゥー人形には男性と女性があったので、そのどちらをも買った。値段としては100円くらい。安いのか高いのかもわからない。文字が書かれた紙も入っていたけれど、日本語ではないし、英語でもないのでよくわからなかった。
ただどうも呪いの人形ではあるらしい。黒い服を着ているし。そこで私にできることはなんだろうと考える。それはありったけの愛をこの人形に注ぐことだ。愛情をブードゥー人形に教えてあげるのだ。
私にできるのはそれくらいだ。ブードゥー人形に愛を教える。私はありがとうの化身なのである意味、正しい使い方と言える。そして、愛の宣教師でもあるので、ブードゥー人形はこの日、愛とありがとうの人形へと生まれ変わったのだ。おめでとう!
石鹸を使う
石鹸を使わなければならない。個人的なことだけれど、暇なのだ。仕事がないのだ。この石鹸を使い仕事を呼び込みたい。そして、愛をも呼び込みたい。愛の宣教師ではあるけれど、愛にも飢えているのだ。
日本に戻ってきて、北海道に行く予定があり、北海道で仕事をもらいたいので、宿泊していたホテルでその石鹸を使った。匂いがとても強い石鹸だった。黄色い仕事を呼ぶ石鹸は蚊連草の匂いがして、赤い愛を呼ぶ石鹸はおじいちゃんの家の石鹸の匂いがした。
仕事も愛も欲しいじゃない。どちらか一方なんて選べないじゃない。仕事のない男はモテないのだ。二兎追うことで成り立つのだ。そのためにはむしろ二つをいっぺんに使う必要があるのだ。
何にもなかった。誰も寄ってこなかった。仕事も愛も私にはこなかった。一人ぽつんと座っていた。石鹸の効果がまるで現れない。一個30円の石鹸ではダメなのだろうか。いや、諦めてはダメなのだ。
北海道ではダメでも、東京の自宅ならばと、やはり同時に2個使い体を洗い、打ち合わせの場に向かった。ここで新たな仕事と愛を手に入れるのだ。きっと大丈夫だろう。私には直感的にそう感じる。それができる男なのだ。
そういうこともある
何にも起きなかった。石鹸を使ったけれど何も起きなかった。ブードゥー人形は知り合いのお子さんにあげたので、可愛がってもらっていることだろう。ブードゥー人形は未来のリカちゃん人形なのだ、きっと。
メキシコ観光局
http://beta.visitmexico.com/ja/
外務省海外安全情報
https://www.anzen.mofa.go.jp/