春ですね。暦の上では既に春という事で、梅が咲いたり早咲きの桜も咲き始めたりと、植物達の中には春が来ているものもいます。
さて、春の野遊びと言えば山菜取りがあります。とても中毒性のある楽しい遊びなのですが、覚えるのが難しそう……というイメージがあるかもしれません。そこで今回は簡単に採取できる野草で美味しい料理を作ってみる、という生地、ではなく記事です。それではどうぞ。
意外と身近な山菜たち
一口に山菜と言っても、山の中に生えているものから、都会の道端に生えている雑草の様なものまで様々で、食べられる野草をひっくるめて山菜と呼びます。例えばつくしは畑に生える邪魔な雑草の代名詞スギナの胞子茎と呼ばれる部分です。料亭で天ぷらに一本添えられると季節感を演出する山菜に様変わりします。
初心者用山菜「ノビル」
つくしはスギナがたくさん生えている場所を春に訪れると採取することができます。山菜の中には毒をもつ植物に似たものがあり注意が必要です。毎年ニュースにもなっているので、皆さんもご存知だとは思います。
こちらは毒草のトリカブトの仲間です。毒が有る植物の代表格として有名ですね。これも春先に楽しめるとある山菜と間違えて食べ、中毒を起こしてしまう例が毎年のように報告されています。
こちらが山菜として食べられるニリンソウです。五角形の形をした葉が、トリカブトの若い芽に似ており、採集の際には注意が必要です。
でも心配いりません。きちんと特徴を覚えれば誰でも簡単に採れ、その味を知ればリピートしたくなる山菜があります。それがノビルなのです。
ノビルとは
ノビルはネギやニンニクと同じネギ属の多年草です。全国で見られ、畑の畔や河川敷などに多い山菜です。都市部にもあるので、皆さんの家の近くでも採ることができます。地上部は大きくなると30㎝ほどの長さになり、踏みつけるとニラやニンニクのような香りがします。また地下には大きくて1㎝ほどの球根ができ、酢味噌和えなどにするととても美味しいです。
たまにノビルと、毒のあるスイセンを間違えて食べてしまう方がいるので、ここで見分け方のポイントを見てみましょう。
まずノビルは葉が空中、つまり万能ねぎのように葉の部分を輪切りにすると中が空洞になっています。そして香り、歩いていて踏みつけただけで、ニラやネギの様な香りが辺りに広がります。
そして毒があり食べられないスイセンですが、葉がニラの様に平らで、空中にはなりません。また香りも無いので、見た目と香りで確認出来ます。
ノビルを採りに行こう
見分け方を覚えたところで、さっそく美味しいノビルを採りに行きましょう。まずはノビルが生えている場所を探します。河川敷や畑などが狙い目です。この時に注意してほしいのが、畑は所有者がいますし、河川敷等もそれぞれのルールがあります。
採収する時は必ずその場所のルールの確認や、所有地の場合地権者とコミュニケーションをとり、採らせてもらったら掘り返した場所を埋め戻す、採りすぎないなど、ルールを守って気持ち良く山菜採りをしましょう。
ふわっと株に成っていて、ニラくさいのが「ノビル」
下の写真を見てください。ノビルの見た目はイネ科植物に似ていますが、株でまとまっていて、丸いアサツキのような葉が風になびいたようになっています。そのような植物を見つけたら、ちぎって匂いを嗅ぐ、あるいは少し口に含んでみてください。ニラの様な香りがしませんか?
それでもノビルかどうか不安な場合は、スコップで根を掘ってみましょう。球根が出てくるはずです。球根がこのような大きい茎には1センチ程の、小さい茎には数ミリの球根が付いてきます。もし1センチよりも大きい立派な球根が出て来た場合、スイセンの可能性を疑ってください。二ラのような香り、空中の葉で見分けましょう。
確認したら食べる分一株分だけ採らせてもらいます。今回、球根は使わないので、葉っぱの部分だけ地際で刈り取ります。周りを綺麗にしてビニール袋に入れ持ち帰りましょう。
ノビルのチヂミを作ろう
採ってきたノビルをさっそく料理していきましょう。今回はノビルのチヂミを作ってみたいと思います。韓国料理のお好み焼きみたいなものですね。ノビルは味がニンニクやニラに似ているので、その代用になる感じです。あとはギャグですね。ノビルのチヂミ……伸びるの、縮み……。
ノビルのチヂミ(2枚分)
・ノビル 写真の量ぐらい
・小麦粉 大さじ4
・卵 1個
・マヨネーズ 大さじ2
・めんつゆ 大さじ2
・水 適量
・ごま油 1枚焼くごとに大さじ2
今回のレシピです。レシピサイトを参考にざっくりと。
今回ノビルが細かったので量を多くとりましたが、これから春になり育つので茎の太いものが手に入ったらもっと少なくて良いと思います。マヨネーズを入れると生地がふっくらし、味もマイルドになります。
大人な味わい
実はここまで書いておいてあれですが、ノビルをこんな風に料理して食べるのは初めてだったのです。ただ結論から言うととても美味しいです。普通にお店で出て来ても違和感無いレベル。生地がふわふわで塩気も丁度良く、そこにノビルのニラっぽい香りとシャキシャキした歯ごたえが加わりお酒が進みそうです。ごま油とマヨネーズの香りがノビルの尖った感じをまろやかにしている感じです。とにかくこれは作って食べてみて欲しい!
毎年、シーズンになると、間違えて食べてしまい食中毒を起こしたり、遭難したり、熊に襲われたりと何かとニュースになる山菜。山菜にはそれだけ危険を冒してまでのめり込む楽しさ、魔力、のようなものがあるのかもしれません。今回は山菜採りの経験が無い人にも魅力を伝えられるような記事になればいいなと思い、この記事を書きましたが、くれぐれもルールを守り、安全第一で、楽しい山菜採りを知ってもらえれば幸いです。
ライター:藏本勇 1987年東京生まれ。源流大学の卒業生です。野鳥が好きで休みの日は写真を撮りに出かけます。野鳥とかスミレの話をすると笑顔になります。