皆様、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
人は誰しも旅に出た風景を、描きたくなる生き物です。それは上手い下手関係なく、この心に映し出された美しい思い出を描き留めておきたくなるものなのです。
そこで、年末旅に出たので、家にあった文房具を掴んでスケッチしてきた様子をお伝えします。
冬の山形へ
今回、個人的な用事があり、年末の一番忙しい時期に山形へといってきました。久々の山形。空気が澄んでいてとても気持ちがいいです。美味しい食べ物や優しい人々が住む県。それが山形の印象です。
山形空港はさくらんぼで有名な東根市にあるまるこぢんまりとした空港ですが、とても綺麗で、山形市までシャトルバスも出ています。1時間に一本ほどの本数で、飛行機の到着時間に合わせてくれるので、とても使い勝手が良く、山形への旅行を考えている方はぜひ利用したい空港です。
早速バスに乗って山形市内に向かいます。きっと私の心を打つ美しい景色が待っているはずです。とりあえず、朝一の飛行機で到着したので、まずは腹ごしらえで朝ごはんを食べに行きます。
この日の山形の気温はマイナス2度、温かいものが食べたいですね。
朝ごはんを食べに
腹が減ってはなんとやら、ということで、朝ごはんに行くために、バスに乗って市内へ移動しました。山形市、道、でかい! 道が大きくて広いのはいいことです。心も豊かになります。大きいことはいいことなのです。
バスを降りて少し歩いたところにある、「一寸亭」さんに来ました。温かい苦そば茶がありがたい。でもそんなに苦くありません。ほっとする温かさです。ここで、知人からオススメされたあれを食べます。
先ほど温かいものを食べたいと言っていたのでは? 今冬だぞ、と思った皆様。そうなんです、私もそうは言っても寒いから温かいお蕎麦を食べようと先ほどまでは思っていたのですが、やはりここはオススメを食べようと思い、この決断となりました。
結論から言うとめちゃくちゃ美味しかったです。肉の味ぎゅっとしていて、この冷たいスープに負けていません。冷たくてもしっかり味があるので、ツルツルいけます。そして、そばも硬めでうまい。このお店では蔵王の井戸水を使っているそうです。
景色をもとめて山寺へ
お腹もいっぱいになったし、美しい山形の風景を求め山寺の方に行ってみることにしました。山形駅から電車に乗りぬくぬくしていると20分ほどで到着します。電車で向かうとどんどん白い景色が増えてきて、雪があるのではないかとドキドキしてきます。雪が多くありませんように。
駅に着くと山形市内より一段寒くなった気がしました。しかし、事前に山形に行ったことのある友人たちに景色の良いところを聞いたところ山寺をお勧めしてもらっていたのでどうしても来たかったのです。寒さはなんとかなる、問題は雪だ、でもそれもなさそうで安心しました。
駅の看板を二度見しました。「歩いて2時間かかる」と書いてあります。事前に聞いたときはサクッと見ることができるから大丈夫、冬に行ったけど大丈夫という話を聞いていました。名前は山寺だけど、まあ、山じゃないしいけるかと思っていたのです。
駅を出ると私の心を表すかのようにどんよりとした雲が空を覆い、その下に山が見えます。見上げると建物のようなものが見えます。もしかしてあそこまで登るのかな、まさかな、あれは一般の人はいけないところですよね、と心の中で何度も自分に確認をとりました。
山形の芋煮
とりあえず心を落ちつかせるためにお昼を食べることにしました。駅から山寺までの参道には飲食店や宿があるのでそれらを覗きながら食べたいものを探します。せっかくなので山形らしいものを食べたい、そして今度こそ温かいものを食べたいのです。
山形の代表的な郷土料理といえば、こちら「芋煮」ではないでしょうか。牛肉のいい匂いとおいしそうなサトイモがゴロゴロ入ったおかずにもなる汁ものです。アツアツで心にしみます。玉こんにゃくやベニバナ入りのこんにゃくもついてくるセットをいただきました。とても美味しい。
地域によっては豚肉で味噌味もあるよとお聞きし、それはもう豚汁では? と一瞬思いましたが、いりこ出汁でつくる庄内風芋煮だそうです。こっちもぜひ今度食べてみたいなと思いました。
山寺に上って最高の風景を探す
朝から食べてばかりで忘れていましたが、私は最高の景色を絵に描くために山形まで来たのでした。お店の人におすすめのルートなどをお聞きし、山寺に登ります。どうか楽に登れますように、なんなら江の島みたいにエスカレーターとかありますように、と祈りながら登山口に向かいます。
最初の階段を見て、これはいけそうだぞという根拠のない自信がわいてきます。この山寺は奥の細道の松尾芭蕉と曽良が訪れたことでも有名です。静けさを感じながら楽しんでいきたいと思います。
境内に入ると様々な見どころがあります。まずはゆっくりと回ることができるので、ここまでは楽勝です。雰囲気の良い境内や神社を巡りながら奥の院を目指します。絵に描きたくなるような風景がたくさんあって、ゆっくり見ていると楽しい発見がたくさんあります。
途中で松尾芭蕉、その弟子曽良の銅像を見ることもできます。海外の観光客の方が多かったのですが、誰も写真を撮っていなかったところを見ると、まだ海外では芭蕉人気は高まっていないようです。何枚もこのおじいさんの銅像の写真を撮る私を珍しそうな顔で見ていました。ぜひ海外の方にも広めていきたいですね。
奥の院に向かう
その先に進むといよいよ奥の院への山門が見えます。ここからは少し空気もピリッとしている気がします。果たして登れるのか、もう目的が完全に変わっているような気がします。門をくぐると山寺の名にふさわしい、山の中の美しい石段が姿を現します。
途中にもたくさんの見どころがあるので、そこを見るという名目で休めばなんとか行けそうです。この日、雪は積もっていなかったのですが、前日までの雪が解けて上からぱらぱらと降ってくるので気をつけて進みます。
割と最初の方に出現する姥堂の説明ではここより下は地獄、上は極楽と書いてありました。長い長い石段を見るとどう見ても下が極楽ではと思ってしまいましたが、登った先には極楽が待っているのです、ツンデレなのです、ありがとうございます。
途中何か所か植物を観察するふりをして休みました。私が良く使う手です。少し頭がよく見えそうな休憩の方法です。もしよければみなさんも使ってください。その横を子供達が走って登っていきました。若いって良いなと思いながら頑張って登りました。仁王門を超えるとだんだんと建物が増えてきました。もうゴールかな。
だいぶん登ってきてゴールかなと思いましたが、まだ上が奥の院だそうです。奥の院奥だな、もう少し手前でもいいのにな、と罰が当たりそうなことを考えながら休んでいると真横の屋根から雪が落ちてきました。周りの海外の方が「オーマイガー」と言っていて、本当に言うんだと感動しました。
ついに奥の院に到着しました。長かった。しかし冬だからか奥の院はしまっていました。海外の方に入れますか? と聞かれたので「ノーオープン、ソーリー」と謝ってしまいました。いや、謝る必要は全くなかったのですが、なんとなく日本人の本能で謝ってしまった感じです。「気にしないで」と励ましてもらいましたが、未だになぜ謝ったのか不思議です。
山寺で最高の景色に出会う
この日は休日だったせいか観光客が多く、とてもではないですが絵を描く感じでなかったので、あきらめて降りることにし、最後に絶対に見たかった五大堂にいって景色を眺めることにしました。
最高の景色を見て感動していたのですが、この日風がすごくて、顔が凍りそうだったのですぐに降りることにしました。私がアンパンマンなら中のあんこが凍ってじゃりじゃりになっているところです。あんなに苦労して登ったけど、降りるのは一瞬でした。登ってくる方々がつらそうな顔をしているのを見て、この上には極楽があるから頑張れ、と心の中で応援しました。
いい風景には出会えたのですが、絵は描けなかったので明日に備えていい風景と縁があるように、縁結びの神社「山寺日枝神社」で縁結びのお守りを買いました。数種類あったので、一番いい縁が結べるように一番高いものを選んでみました。
こんなに大きなお守りを見るのは初めてです。大きいことはいいことだの信念で生きているので、これはいい縁がありそうだぞと思いながら山形市内のホテルへと戻りゆっくりと休むことにしました。もちろん翌日、普段意識していない筋肉が筋肉痛になっていました。
山形市内の良い景色
最終日、飛行機の時間までに良い景色を探して絵に描くというミッションのために朝から山形市内を回りました。しかし、この日は日本全体に今シーズン最高の寒気が入っておりまして、朝からぼた雪が降り積もっておりました。
寒いし、雪は降っていますが、最高の景色をこの手で描くために出発です。市内を観光しながら良い景色を探していきます。雪の降った山形は風情があり、とても美しいです。古い建物なども残っており、道も広いので絵になるのです。
雪景色はきれいなのですが、途中吹雪いてきたので少し休憩として山形名物を食べに行きました。「どんどん焼」です。簡単に言うと箸にまかれたお好み焼きのようなものですが、お好み焼きよりもちもちで、食べ応えがあります。他の地域のもはしまき等の名前で似たようなおやつがあり、子供達のおやつだったそうです。
足元はびしょびしょでも、お店の方から山形のお話をお聞きするなど、お腹も心も温かくなり、再びいい景色探しに出発です。お店の近くが霞城公園なので、さっそく向かってみます。ここは山形城跡を整備した公園で桜の名所でもあります。
公園内をしばらく歩いたのですが、雪が吹雪いてきて、歩く場所なども制限されています。どうにか城跡にも行ってみましたが、そこには静けさしかなく、一面雪景色でした。また桜がきれいな時期などに来たいです。飛行機の時間が迫る中、焦って歩いていると山形の英雄最上義光の銅像があったので、そちらを描かせていただくことにしました。
いや、何を描いているのかと思われた方もいるかもしれないのですが、一枚目の写真をよく見てください。今回持ってきた鉛筆が異常にデカいのです。そしてスケッチブックが小さい。それはこうなりますよ。
大きいことはいいことだの信念でよかれと思って選んだ鉛筆ですが、飛行機でも邪魔になるし、一日これをもって山寺を登った際も背中に当たってすごく邪魔でした。逆に荷物にならないよう選んだスケッチブックは小さすぎて、大きな鉛筆とは合わなかったのです。少し考えればわかることだったのですが、なぜかテンションのままこれを持ってきてしまいました。
やはり普通が一番
今回山形の旅を通して、「普通が一番」ということがわかりました。2025年も奇をてらわず、粛々と普通に頑張ろうと思います。皆さんもぜひ山形や地域に旅行したら絵を描いて思い出を残してみてくださいね。写真とは違う思い出が残るはずです。その時は普通の鉛筆とスケッチブックをお勧めします。