皆さんスミレと言う花が大好きですよね。私もスミレが大好きです。前の記事では野鳥が好きで、野鳥について書きましたが、その次にスミレが好きです。もしスミレが季節に関係なく咲いていれば野鳥より好きかもしれません。
というわけで今回はスミレの花が見頃の、山梨県小菅村にスミレ探しに行った模様をお伝えしながら、スミレという植物の魅力を紹介出来たらと思います。
スミレとは
スミレとはスミレ科スミレ属の総称です。またややこしいですが狭義には、Viola mandshuricaという種の和名でもあります。
世界的にはスミレ科の植物は23属800種類あるといわれていますが、大半の属は木であり、約500種類が木本です。草本を含む属は3属だけで、そのことからもスミレは木本が中心だということがわかります。ちなみに日本にはスミレ属の多年草しか分布していません。
日本のスミレ
日本はスミレの宝庫です。北海道から沖縄の離島まで約60種ものスミレが分布しており、細かな品種まで数えると220種類もあり、スミレの豊富な国であるといえます。関東だけでも海岸から亜高山帯まで様々な環境に適応したスミレが自生しています。
スミレは多年草であり、根が冬を越して毎年同じところで花を咲かせます。花が終わった夏の間は、葉を広げ栄養を根に蓄えて、来年に備えるのです。
スミレは春に咲く
ご存じの通りスミレが咲くのは春です。春の一時期にしか咲かないというのが、この植物の魅力でもあります。スミレが咲く目安になるのが、桜です。東京で桜の開花宣言が出た日から、関東のスミレシーズンが始まります。東京では高尾山がスミレ観察にはおすすめで、よく通いました。
4月も下旬になると、もっと標高の高いところ、気温の低いところに、スミレの開花前線も移っていきます。この時期、小菅村をはじめとした、少し山深い地域でスミレが咲き始めるのです。
スミレを求めて小菅村へ
今回は4月19-20日に山梨県小菅村の三ツ子山でスミレを探しました。小菅村は標高530m~2000mに位置しており、4月下旬でもまだまだスミレを楽しむことができます。三ツ子山は標高約840mで、高尾山よりも200mほど標高が高いです。
結果から言うと、行った日はまだシーズン序盤という感じでした。このあたりでスミレを見るならゴールデンウィーク前後が一番いいと思います。
小菅村へは公共交通機関を使って行きました。JR中央本線の大月駅を9時に出る、小菅の湯行きのバスに乗ると、10時ちょうどに小菅村に着くことができます。
スミレ探しに出発
バスを降りたら小菅村の特産品が売っている物産館で、お昼ご飯の饅頭(中にお惣菜が入っている)を買って、いざ出発です。併設するアスレチック施設、フォレストアドベンチャーの前を通って、三ツ子山の登山道入口へと向かいます。
雑木林や杉林の中の林道を歩いていると、早速、薄紫色のスミレを見つけました。春ほかに先駆けて咲く、ヒナスミレです。早い時期に咲くはずのこのスミレが、この時期に見られるというのも、標高の高い小菅村ならではでしょう。
スミレではありませんが、フキノトウを見つけました。「フキ」という植物の花の部分で、フキみそや天ぷらなど春の味覚として親しまれています。ちなみに三ツ子山の周辺に私有地が多いので、山菜の採集は控えましょう。
登山口のそばでタチツボスミレを見つけました。このあたりで最も普通にみられるスミレです。スミレを覚えたい方はまずこのスミレをしっかり覚えると良いでしょう。特徴としては茎が立ち上がり、綺麗なハート型の葉をしています。
村営バス「三ツ子山入口」から登山遊歩道へ入る
登山口に到着しました。ここからは舗装されていない登山道になります。スニーカーでも登れますが、できれば足元は軽登山靴が良いでしょう。
スミレを探す間、殆ど登山者には会いませんでしたが、登山道は良く整備されていて歩きやすいです。
アカマツの混ざった林でスミレの葉を見つけました。ナガバノスミレサイシンというスミレです。これも早春に花を咲かせる種類なので、もう花が終わってしまったのかもしれません。薄紫色の大き目な美しい花を付けます。
さらに進むと山頂付近の林でアケボノスミレを見つけました。森の中でも尾根など乾いたところを好むスミレです。特徴としてはピンク色の大きな花と、葉が完全に開ききる前に花が咲く所です。場合によっては葉が出てくる前に花が咲くので、ピンクの花だけが地面から出ている、なんていうシーンを見ることもあります。
アケボノスミレの横にはとても小さなスミレが咲いていました。フモトスミレというスミレです。「ふもと」という名前が付いていますが、麓というよりも乾いた尾根筋などを好むスミレです。比較で1円玉を置きましたが、それよりも小さいというのがわかると思います。
山頂付近のベンチで、物産館で買った饅頭を食べました。ミヤマセセリという蝶が周りを飛んだり、ヒガラという鳥がやってきて仲間と鳴き交わしたりして、なんとものどかです。
この日は早めに切り上げて、温泉に入ることにしました。戻る途中の集落にあった桜並木が美しかったです。温泉に入った後は物産館で明日の朝食を買って、温泉の近くにある宿に泊まりました。
2日目は小菅村にある宿泊施設「原始村」からスタート
2日目は三ツ子山の東側から回り込んで登ることにしました。村内を歩くとあちこちで桜が満開となっており、綺麗でした。東京でお花見できなかった人も、ここに来ればまだまだお花見が楽しめそうです。
集落を歩いていくとだんだんと自然が濃くなってきました。橋を渡ると雨乞いの滝という道標が目に留まったので、寄っていきます。小菅川と白沢川の合流点にあるパワースポットで、捻じれながら落ちる見事な滝を見ることができます。
滝へ降りる道には数種のスミレが咲いていました。エイザンスミレは深く切れ込んだ葉が特徴的なスミレです。花も大型で美しいので、登山者にも人気があります。
マルバスミレです。名前の通り丸い葉と、花も丸い印象を持った可愛らしいスミレです。
オトメスミレです。タチツボスミレの品種で、花弁が白いものをこう呼んでいます。タチツボスミレの中に混ざって咲いていることがあり、見つけると嬉しいです。このようにまとまって咲くととても美しいです。
三ツ子山の南斜面には桜がたくさん植樹されています。まだ花が咲き始めた所なので林内は明るく、春を待ちわびていた花たちが所々咲いています。写真は濃い紫色が美しいアカネスミレ。少し乾いたところを好み、丘陵地帯でよく見られます。見つけると嬉しいスミレの一つです。
道の真ん中に青い花が咲いていました。リンドウの仲間です。春に咲くリンドウの仲間は数種類ありますが、これはフデリンドウでしょう。フデリンドウは根生葉(地面から生える葉)が無いのが特徴です。星を散りばめた様にあちらこちらに咲いていて美しかったです。
キク科のセンボンヤリが咲いていました。春と秋に花を付けますが、秋は閉鎖花といって花を開かず、花粉を他の個体と交換しない自家受粉を行うという、面白い性質があります。実はスミレの仲間も閉鎖花をよく付けるので、一見花を咲かせていなくても実はしっかり繁殖していたりします。
三ツ子山を登っているとスミレに虫が来ているのを見つけました。ビロウドツリアブと言って、早春に姿を現すアブの仲間です。スミレには様々な昆虫とつながりがあります。花には蜜を求めて蝶やアブの仲間が、葉を食べる蝶や蛾の仲間、種子を好んで持ち帰る蟻の仲間など、多様な昆虫がスミレを利用しており、スミレにとっても昆虫の存在は繁殖を進める手助けになっています。
その後三ツ子山の登山道を進んでいきましたが、まだスミレには早かったようで、標高を上げると花が殆どありませんでした。昨日歩いた所に合流し、アケボノスミレやフモトスミレをもう一度見て、下山することにしました。
スミレシーズンは小菅村へ
今回4月19,20日に標高840mの三ツ子山でスミレを観察しましたが、またシーズンはこれからと言ったところでした。
小菅村の村内には気軽に1000m以上まで車で行ける峠がいくつかあるので、それを使えば長くスミレを楽しむことが出来るでしょう。また、標高が違えば当然生えているスミレの種類も違うので、高尾山などではまず目にすることが無い珍しいスミレも自生しています。
みなさんもぜひ一度スミレを探しに小菅村に行ってみてください。スミレだけでなく、様々な植物との出会いが待っていますよ。
ライター:藏本勇 1987年東京生まれ。源流大学の卒業生です。野鳥が好きで休みの日は写真を撮りに出かけます。野鳥とかスミレの話をすると笑顔になります。