人は誰しも美味しく安全な食物を食べたい生き物です。食べ物を旬に合わせて食べるのは、最高の贅沢の一つかもしれません。しかし、一年中美味しいもの食べたいな、と思うのもまた人間らしさ。
そこで、一年中美味しい野菜が作られているという植物工場に潜入してみました。
植物工場って知っていますか?
最近よく耳にするこの「植物工場」。野菜を外の畑やビニールハウスではなく、衛生管理された工場の中で作ろうという技術です。
私もなのですが、なんとなくよくわからないし、野菜は畑で農家さんと自然が協力して育てるもの! という感覚がある人間からすると、少し不安な面があるのではないでしょうか?
でも、何も知らずにただ怖がるなんて、ナンセンスだな! と思い、思い切って福井県まで実際に見に行ってみることにしました! 百聞は一見にしかずです。
株式会社NOUMANN(ノーマン)
福井県は平成23年から植物工場の誘致や建設、電力使用に対する優遇措置などの操業支援に力を入れて来た、日本でも有数の植物工場県です。その豊かな自然条件から海の幸、山の幸が多い福井県ですが、雨や雪が多いことでも有名です。天候に左右されない植物工場は新しい農業の形としても期待されています。
そんな植物工場パラダイスの福井県美浜町にある株式会社NOUMANNは、フリルレタス、バタビアレタス、また全国的にも珍しい「結球レタス」を生産している会社です。今回は代表取締役の宮下清優さんにお話を伺い、植物工場の謎について迫りたいと思います。
箱入り娘の野菜たち
本日はよろしくお願いいたします。早速ですが植物工場ってどんな形の農業ですか?
基本的に播種から収獲・梱包に至るまでのすべての工程を工場内で行います。例えば、福井県美浜町の特産に選ばれた「美い玉(びいだま)」の場合は、播種から約60日間かけて工場内で大切に育てます
箱入り娘みたい! 作物が種から育つまでの全ての作業を行うなら工場も広くないとダメなイメージなのですが、、、
ある程度は必要ですが、野菜工場は主に水耕栽培で、同じ条件で生育できるので、段を重ね横だけでなく上のスペースを使うことができます。弊社工場では、毎日5000株のレタスを収穫しています
えっ! 毎日5000株ですか、すごいですね。レタスチャーハンにレタスのひき肉巻きに、レタスサンドにしてもまだまだ余る! レタスのゲシュタルト崩壊が起きそう!
全ての種類合わせてですけどね。成長日齢に応じて、全日齢5000株をストックしているからこそ毎日5000株収穫できるという仕組みになります
つまり、工場内には、播種から収穫まで20~30万株の苗があり、毎日5000株の収穫と5000株の播種を行うイメージになります
さすが工場。野菜マンションみたい! そこでみんな同じように大切に育てられているんですね。でもそうなると、個性や地域差などは出にくそうですね
そうですね。地域の個性などはでません。他で作ったものとの差別化はしにくいのですが、みんな生育方法にこだわりを持って作っているので、工場の経営者によって味が違うことはあるかもしれません
あとうちは、全国にも珍しい結球レタスを作っています!
レタスといえばこの丸いレタスのイメージだけど、意外にも植物工場では作っているところが少ないんですね
そうですね、植物工場はとにかく生産効率が優先されるので、手間も時間もコストもかかる結球レタスに挑戦するところは少ないんです
なるほど、徹底的に効率にこだわるんですね。たくさんとって、たくさんレタスチャーハン作りたいもんな、、、
チャーハンはともかく、野菜工場は電気や水など工場の環境を維持するコストがとにかくかかってしまうので、いかに効率良く安全・安心な生産ができるかが鍵になります!
最大のメリットは安全・安心
弊社ではJGAP協会が認証するASIAGAPver.2認証も取得しており、品質は折り紙付きです。品質が安定しているので、外葉まで食べられるんですよ!
だから食べられるところが多く、無駄にすることもありません!
草食動物やあおむしのようにムシャムシャ葉っぱを食べるのが夢だったので、それは嬉しいな。
なんだか、農業なんだけど、別の産業のようですね。ニュージェネレーションというか。近未来感がある。ちなみに、種は畑で育てている野菜と違う植物工場用の種などを使っているんですか?
いえいえ、全く同じですよ。路地でも普通に育てているやつです
やはりそこも育てやすさや、効率重視で選んでいくんですか?
そこは自分が本当に美味しいと思ったものを選んでいます。美味しいものを食べて欲しいじゃないですか。商品への愛情は、多くの生産者の方と同じなんじゃないかな
農業を憧れの職業に!
お話を聞いていくうちに、だんだんと野菜工場のこともわかってきました。まだまだ研究が進んでおらず、模索中の部分も課題も多いそうです。株式会社NOUMANN(ノーマン)でも従来の農業とはまた少し違った感覚で生産に取り組んでいるそうです。
そもそもどうして宮下さんは植物工場をやろうと思ったんですか?
もともとIT業界で働いていたのですが、農業をみんなに憧れてもらえるような職業にしたいなと思ったんです
なるほど、憧れてもらえる職業っていいですね
どうしても農業はキツいイメージがあり、若者離れが激しい職業の一つだと思うんです。でも、このような新しい技術がもっと発展して誰もが働きやすくなり、稼げる職業となり、地域に貢献できればいいなと思っています
うちのレタス達は地域の特産品やふるさと納税の返礼品にもいれていただいていますので、ぜひ福井県美浜町をチェックしてみてください
福井県美浜町株式会社NOUMANNのふるさと納税(さとふる)
https://www.satofull.jp/products/detail.php?product_id=1019079
手塩にかけた箱入り娘達が全国に。おいしいレタスを年中たべられるなんて夢のようですね。本日はありがとうございました!
みんな違って、みんないい
最初、植物工場というと工業的な感じだけがしていましたが、お話を聞いていると、メリットもたくさん見えてきました。それでも宮下社長からはまだまだノウハウが少なく、多くの野菜工場が経営面やコストなどで問題を抱えている厳しい部分もあるとお話しして下さいました。
赤字経営の会社も多く、消費者への浸透も薄いので、まだまだ課題も山積みです。しかし、だからといってあきらめてしまうより未来への選択肢として挑戦してみることが必要ではないかと宮下社長のお話を聞いて感じました。
なにより工場で作られたレタスも美味しくて、丸ごと一個食べてしまいました。従来の農業ももちろんたくさん素晴らしい点があり、私は大好きです。そして、新しい農業にも希望はある。まだまだ農業は面白くなりそうだぞと素直に感じました。今後もっと農業産業全体が盛り上がって、若者の憧れの職業になってくれるといいなと思います。
取材協力
株式会社NOUMANN(ノーマン)
https://www.noumann.com
*株式会社NOUMANNでは農業に興味のある人材を大募集中です。植物工場に関する講演等も承ります。詳しくはぜひ会社のサイトをチェックして見てください!
福井県美浜町観光協会
http://wakasa-mihama.jp/index.html
最後はこの曲でお別れです
『Q』
詩・曲 おかミルク六郷土手
編曲 山田哲郎
手を上げて、右足出して、走り出したら
スタートライン
腕を振り、下向きながら、がむしゃらに目指す
ゴールライン
ひとり、ふたり、追い抜いていく
その快感に、胸がときめいていくのは
どうしてだろう、こんなに光り輝く
水を湛えた、まるで空中ラビリンス
謎が解けるまで、その先見るまで
僕たちの夢は、果てしなく続く
その謎の先、君が見えるもの
甘い未来の中で生まれていくもの達
果てしない先に、何もなくても
振り返る先に未来が見える
手のひらの中に握る希望の歌が
どうか壊れてしまわないように
手をただ優しく結ぶだけ
謎が解けるまで、この先見るまで
走り続ける僕らの道標
その謎の先がたとえなくても
甘い匂いの中で振り返る僕らは
止まらずにまた走り出す