寝苦しい夜というものがある。暑くて眠れない夜だ。今年の夏は特に暑いけれど、冷静に考えると5月くらいから10月くらいまでだいたい暑い。よって寝苦しいのだ。夜って体が火照るじゃない、だから寝苦しいのだ。
少しでも快適に眠りたい、と調べたところ「メキシカンハンモック」が涼しくて快適という話を聞いた。メキシコのハンモックで、手編みで作られ通気性が抜群らしい。ぜひ欲しい。ということで、買いに行くことにした。
火照る体
寝苦しい。どうにも寝苦しい。エアコンをガンガンに入れたいけれど、それは体に悪い気がする。適度に入れたつもりが火照る。暑苦しくなって寝苦しくなるのだ。涼しくて快適な眠りを手入れたいのだ。
そんな寝苦しい時に「メキシカンハンモック」の存在を知った。布のようなものではなく、ネット状になっているハンモックだ。そのため通気性がよく、蒸れずに快適に眠れるらしい。普通のハンモックよりいいのだ、どうやら。
寝苦しさとお別れしたい。ということで、メキシカンハンモックで眠ってみることにした。そのためにはまずメキシカンハンモックを手に入れなければならない。メキシカンというくらいなので、メキシコに行けばあるのだろう。
パジャマでメキシコ
寝苦しくない快適な睡眠を手に入れるために、メキシコにメキシカンハンモックを買いにいくことにした。成田からメキシコへは直行便も飛んでいるので、意外と簡単に行くことができるのだ。
簡単と言っても13時間ほど飛行機に乗ることになる。そんな時に「パジャマ」を着ているとすごく楽だった。長時間の飛行機は窮屈で疲れると思っていたのだけれど、パジャマだと締め付けもなく、快適。飛行機にはパジャマというのを覚えて欲しい。よく眠れた、すでに、ハンモックがなくても。
メキシカンハンモックはメキシコの「ユカタン地方」が発祥の地だ。ただ基本的にはどこでも売っている感じだ。日本ではあまり見かけないけれど、食品や日用雑貨を売る市場がどの街にも数箇所あり、そこに行けばだいたい売っている。
メキシコは地域により異なるけれど、朝夕は15度と半袖では寒く感じるけれど、日中は日差しのせいで40度近くまで気温が上昇する。そのため昼寝には暑すぎる国と言える。昼寝したいじゃない。昼寝って最高じゃない。そういう時にもハンモックなのだろう。
だからこそハンモックなのだ。ただせっかくメキシコまで来たのだから、まずは「子守唄」を歌ってもらおうと思う。子供の頃、母の歌う子守唄で眠りに誘われた。メキシコは歌の国。マリアッチというギターやトランペットなどを使う楽団がいるのだ。素晴らしき眠りへの誘いを期待できる気がする。
マリアッチ発祥の地
せっかくマリアッチに子守唄を歌ってもらうのだからと、発祥の地に行くことにした。「トラケパケ」という街がその場所だ。ここなら街中にも気軽にマリアッチがいるはずなのだ。発祥の地だし。移動にはバスを利用した。ゆったりとした素晴らしきバスだった。
先ほどまでの写真と違い、左手首に見慣れないものが巻かれているのがわかると思う。快適な眠りを手に入れるためにメキシコまで来たけれど、お腹は減るじゃない。ハンモックではお腹は満たされない。だから食事をするじゃない。
ハンモックで快適な眠りを手に入れる前に、永遠の眠りを手に入れそうになっていた。どの料理か不明なのだけれど、寄生虫が宿りまして、熱が40度近く出て病院に行くことになりまして、ここ数年で一番キツい状況になり違う眠りを手にいれそうでした。
パジャマを着て手になんかつけて街を歩いていると、入院患者が病院から逃げ出して来たみたいに見える。でも、そうじゃない。眠りに来ただけだ。でも、マリアッチはいなかった。高そうなレストランにしかいない。仕方なくメキシコシティに戻ると普通にいた。広場にマリアッチが普通にいた。
マリアッチに「子守唄を歌ってください」とお願いした。相談の結果「Arrullo De Dios」という曲を歌ってくれることになった。日本語にすると「神の子守唄」ということになる。さっき天に召しそうなっていたので、ちょうどいいかもしれない。歌ってもらおうではないか。眠りに誘ってもらおうではないか。
素晴らしく眠れなかった。途中で酔っ払いの乱入、トランペットの近距離演奏。あらゆる意味で迫力があって楽しかったけれど、眠れはしなかった。いい歌だけれど、眠れはしなかった。やはりハンモックしかないのだ。
ハンモックを手に入れる!
メキシカンハンモックは現地では「アマカ」と言うようだ。市場に買いに行った。メキシコの市場はどこも活気で溢れていた。肉や魚、日用品に民芸品、レストランなどが市場に軒を連ねている。
いくつものお店でハンモックが売られていたけれど、安くて私の下手くそなスペイン語に付き合ってくれるお店で買った。日本円で1,700円ほど。日本でもメキシカンハンモックは売っているけれど、それより断然安い金額だ。飛行機代はかかるけど。
快適すぎる!
メキシカンハンモックをついに手に入れた。あとは吊るす場所を探せばいい。どこに吊るせばいいのだろうか。というか、吊るしていいのだろうか。メキシカンハンモックを持って街を練り歩いた。
街の人に「メキシカンハンモックを吊るしていいか?」と聞いた。すると「ここはメキシコだぜ! 吊るしていいに決まっているじゃないか! あそこらへんはどうだ」と教えてくれた。「ここはメキシコだぜ!」がカッコいい。映画みたいな台詞だ。
快適だった。めちゃくちゃ快適だった。寝転がっているに自分の下に風が通る。床暖房の逆のような感じ。ネット状なので通気性もいい。それでいて安心感もある。包まれている感じなのだ。これすごくね、となる。
涼しい。木陰でやっているのもあるけれど、日中の暑さが嘘のようなのだ。風や自分のちょっとした動きで揺れるハンモックはゆりかごのようで眠りを促進する気がする。寄生虫が湧く、マリアッチがいない、などいろいろなことが起きたけれど、そんな疲れが抜けていく気がした。
思っていた以上にメキシカンハンモックはよかった。これで寝苦しさとはおさらばできる気がした。家でも使おうじゃないか。これで私は寝苦しい夜にバイバイなのだ。私は寝苦しさに勝ったのだ。
日本の自分の家に帰ってきた。大きな問題が発生した。自宅にハンモックを吊るすものがない。カーテンレールに吊るしたらカーテンレールが壊れるだろう。そのため普通に敷いて寝てみた。全く意味をなさなかった。次はハンモックを吊るすやつを買いに行きたい。メキシカン吊るすやつ、とかないかな。
寝る前には歯を磨こう!