水道水、それは我々の日常で一番近くにある「水」だ。蛇口をひねると水が出てくるのだ。なんて素晴らしいのだろう。昔は水道水を飲むことに抵抗があったけれど、近年は水道水が美味しいと話題だ。
そんな水道水の中でも、美味しすぎる水道水が存在する。水道水をペットボトルに入れて売っていたりもするのだ。もはや水道水はグルメのレベルまで来ている。いま水道水が熱いのだ。
グルメの水
どこか遠くに出かけると、その地域のグルメを食べる。それは海の幸かもしれないし、山の幸かもしれない。近年はB級グルメも注目されている。そのようなものを食べるのが旅の醍醐味なのだ。
ただそんなグルメを食すのはお金がかかるのも事実。東京に比べれば安かったりもするけれど、限度があって、たとえば海鮮丼などは高い。景気が一時期に比べればよくなったと聞くけれど、やっぱり高いのは痛いのだ。
では、ほぼ無料で地域のグルメを楽しめたら、どうだろう。嬉しいに決まっている。そこで水道水なのだ。水道水は安い、それが美味しければ最高なのだ。そんなことを考えていたら、そのような街があった。鳥取県の米子である。
美味しい水道水
鳥取県米子市。江戸時代の初期から商業都市として知られ、「山陰の大阪」とも言われている。境港市と隣接しており、海産物が美味しく、どら焼きの生産量が世界で1位だったりもする街だ。
米子に限らず鳥取はやっぱり、海産物が美味しいのだ。海鮮丼を食べたい、と誰もが思うだろう。しかし、高い。いや、安いんだけど、高いのだ。好きだけど別れる、みたい甘酸っぱい感じなのだ。だから、食べられないのだ。
グルメと言われると、やはり固体を思い浮かべる。肉だったり、魚だったり、炭水化物だったり。しかし、水もまたグルメなのだ。だって、美味しいのだから。米子の水はその美味しさから、ペットボトルにもなっている。
米子の水道水は美味しいのだ。昔から信仰の対象にもなってきた「大山」からの水が地中に流れ、その水を汲み上げ、水道水となっている。米子の蛇口からいま出ている水は50年前に降った雨。それが大山の土壌で濾過されていくのだ。
水が美味い!
米子水道局は見学できる。水道記念館があったり、水を汲み上げている井戸があったり、それらを無料で見ることができるのだ。私は無料こそが正義だと思っている。ただ私の書く原稿は例外で、可能ならば法外なお金が欲しいと思っている。
記念館では米子の水道事情について知ることができる。この地域では、昔から水道水を飲む文化があったそうだ。だって美味しいから。ph値がややアルカリ性らしく、体に優しく受け入れやすい水質なのだそうだ。
米子の水道水は10カ処ほどある井戸から汲み上げた水をブレンドしているそうだ。美味しい水と美味しい水の共演と言える。ペットボトルの水道水はその中の一つの井戸で汲み上げられたものだそうだ。
水道局の方にお話を聞けば、厳密に言えば水道水とペットボトルの水は微妙に異なるかもしれないけれど、味は全然変わらない、とのことだった。急に訪れたが快くお話を聞かせてくれた。米子は商業の都市で、よそ者を受け入れやすい土地柄、というのもあるのかもしれない。
グルメとしての水
水道水が美味しいのはわかった。水道水が美味しい街ランキングみたいなもので、1位になったこともあるし、だいたいベスト5には入っているようだ。だって、大山の井戸水だもの。それを聞くだけで美味しい気がしてくる。
そして、何より安いグルメなのだ。米子ではグルメに高いお金を払う必要がない。なぜなら水が美味しい、つまりグルメだから。何より米子に来なければ、この水を飲むことはできない。胸を張って水道水をグルメと言っていいのではないだろうか。
最高である。飲み放題。しかも無料だ。公園などに行けば、水道があると思う。そこで飲めば、米子の名物「水道水」を好きなだけ飲むことができる。確かに、口当たりがよく美味しい気がする。腹にもたまる。チャプチャプと音がする。
米子は文化圏が島根とも繋がっているので、鳥取の名物はもちろん、島根の名物を食べることができる。上記のパンは「バラパン」というもので、島根のパンなのだけれど、米子のスーパーに行けば普通に売られていた。
最高のルーチン
上記の名物の良い点は安いことだ。高くても200円くらい。これで鳥取のグルメを抑えられている。何より、水道水があるのだから。もうお腹一杯になるのは間違いない。水道水と共にいただくのだ。
これを繰り返せば、移動以外は全て鳥取のグルメなのだ。米子は素晴らしい。もはや山陰のグルメを最高に満喫していると言える。しかも、安い。もっとも蛇口への移動が面倒、という意見もあるのだろう。
タイムイズマネーだ。いくら無料でも移動という時間を使うのはもったいない。そんな時はペットボトルの米子の水だ。ほぼ水道水なので、味は変わらない。何より移動せずに鳥取のグルメを楽しむことができる。
これが正しい鳥取の楽しみ方である。もっといろんな名物があると思うかもしれない。ただここまで安い堪能の仕方はないだろう。何がすごいって、米子はトイレの水とかも美味しいということだ。さすがに飲まないけど。
米子の水
米子の経済的な食の楽しみ方を紹介した。お金がないのも、もちろんあったけれど、美味しいのだから仕方がない。実は鳥取駅近くで車を借りて、米子に行ったのだけれど、レンタカー屋さんで「県外に行きますか?」と聞かれ、いえ鳥取だけです、と答えたら、米子の方には行かないんですね、と言われた。米子は島根なのかもしれない。