皆さんは「疲れた、歯を磨いて寝よう。あっ、歯磨き粉が無い。絶望した」といった経験はないだろうか。僕はある。
そもそも人は何の為に歯を磨くのか。それは歯を奇麗にし、口内環境を整える為である。僕は歯医者でも、ましてや歯科学会に所属しているわけでも無いので歯磨きにはそこまで詳しくは無いのだが、早い話が殺菌なのだろう。
いや、ここで専門家に難しい話をされても僕のファミコン並のスペックの頭では理解出来ないので、そうゆう事にしておこう。
つまり、口の中を殺菌出来ればそれは歯磨き粉になる。もっと言えば、別に粉である必要も無い。
ならば家の中でも代わりを見つける事は意外と簡単ではないのか。
歯磨き粉を探す
では早速、歯磨き粉の代わりとなるものを探していく。家の中で殺菌出来るものを探すのだ。殺菌ときいて稲妻のように頭をよぎったのが『カビキラー』だ。
しかし、もしこれで歯を磨いたならば、お口の中に稲妻が走ることは避けられない。もちろんボツだ。家にあれば良いというわけではない。
僕は思った、口に入れるのだから冷蔵庫を探すのが一番早いのではないか?
あった。殺菌を期待できる。しかもご丁寧にチューブに入っていてビジュアル的にも申し分ない。そう、ワサビだ。
調べてみたところ、ワサビの辛味成分はアリルイソチオシアネートと言う復活の呪文のような物らしく、殺菌効果もちゃんとあるらしい。ワサビも伊達や酔狂で刺身の横に添えられているわけではない。
歯を磨いてみる
しかし、代わりになる物を見つけたからといって満足してはいけない。実際に歯を磨いて確かめてみなければ意味が無いのだ。
ここまで来たらあとは磨くだけだ。早速磨いてみよう。
想像の三倍は辛かった。一瞬走馬灯が見えたがゆっくり見ている暇はない。今回の反省点はおそらく鮮度にあったのだと思う。そう、鮮度さえ良ければ歯は磨けるに違いない。
何が僕をここまでさせるのか、きっと歯磨き粉が無くて悲しんでいる人々をほおっておけない僕の良心だろう。
再度歯を磨いてみる
というわけで、今度は鮮度の良いやつを用意した。何たってまだ自然から採ってきたままの姿だ。今回は山梨県小菅村のワサビを用意した。多摩川の源流で育まれたワサビなら、もしかしたら、ひょっとしたら、辛く無いのではないのだろうか。しかし怖いので事実を実験前に調べたりするような愚かな真似はしない。チューブのワサビのせいで僕のライオンハートは、ピグレットのように臆病になってしまったのだ。
やはり鮮度が良かったのか、僕の優しさが伝わったのか、チューブのワサビよりも人体に優しい気がする。これならいける。
これでもう歯磨き粉が無い夜に枕を濡らすことも、血迷ってカビキラーを手に取る事も無く平和になるだろう。もうノーベル平和賞ものだ。これからは歯磨き粉が切れていたら、ワサビを一本すればいい。簡単な話だ。
歯磨き後
歯を磨いた後は使ったワサビをどうするのか。もちろん農大生は食べ物を祖末にするような事はしない。水でうがいをして、そのまま美味しくいただいた。しかもただの水じゃない。
農大などで売っている「多摩原流水」だ。意識が高すぎて空も飛べそうだ。
人は公共の場でも歯を磨けるか
人は何も決められた時間だけに歯を磨く訳ではない。例えば、焼き肉やラーメンを食べた後は口の中をリフレッシュさせるために歯を磨きたくなるだろう。
しかしここで重要なのは、外では簡単に歯が磨けないということだ。何故磨けないのか、それは外で歯を磨いた後にうがいをして水を捨てるのが難しいからだ。何故難しいのか、それは社会において口に含んだ物を出すというのは重大なマナー違反だからだ。だが待てしばし、僕は今まで何をしてきたんだ。ワサビで歯を磨いてきたじゃないか。最後に歯磨き粉(ワサビ)を水で飲み干すあの方法ならどこでも歯が磨けるはずだ。
実際にやってみたが、これまで社会におけるルール違反やマナー違反は見られなかった。つまりワサビを使えば公共の場でも歯を磨く事は可能だ。これで外で歯を磨きたくて困る人はいなくなるだろう。これからもワサビの新たな可能性を探す僕の旅は続く。
企画・執筆:東佑輔